治療について

目次

このような症状に

「はり灸 まつもと」では、腰痛や五十肩などの鍼灸治療はもとより、自律神経の乱れから生じる症状の鍼灸治療をしています。
更年期障害、倦怠感などの不定愁訴や自律神経失調症などです。

また「病院で検査をしても数値に異常はないのに体調が優れない」という人は、治療の効果を実感できると思います。

「はり灸 まつもと」では、このような症状の鍼灸治療をしています。

更年期障害
自律神経の乱れや不調からおこる不定愁訴
片頭痛
坐骨神経痛
ぎっくり腰

自律神経の症状

ストレスなどが原因で自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが乱れてしまうと「不定愁訴(ふていしゅうそ)」という症状になることがあります。

不定愁訴は「疲れがとれない」「頭が重い」「やる気が起こらない」「肩がこる」「眠れない」「食欲がない」などの症状をいいます。
なんとなく調子がすぐれない、なんとなく体調が悪いというような状態です。
不定愁訴にかかると、自覚症状を訴えるものの決め手となる所見に欠けるためか、何件もの病院で診てもらっても原因がはっきりせず、検査を受けても異常がみつからないようなこともあります。

また、さまざまな不定愁訴が起こった状態を自律神経失調症ということがあります。
自律神経失調症は、病名ではなく自律神経系のさまざま症状の総称をいいます。
日本心身医学会では、自律神経失調症を「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器官的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と定義づけています。

私たちの身体にとって自律神経は意識することなく気がつかないところで働きますが、その役割は大きく、バランスを乱してしまうと多くの症状が現れます。
不定愁訴や自律神経失調症の症状について、鍼灸治療で治療効果がみられるものをいくつか紹介します。

全身にあらわれる症状
めまい
立ちくらみ
微熱
ほてり
汗がでる
だるさ
倦怠感
疲労感
不眠
朝起きるのが辛い

精神にあらわれる症状
イライラする
怒りっぽくなる
悲しくなる
情緒不安定になる
落ち込む
ささいなことが気になる
悲観的になる
やる気がでない
何もしたくない

その他
頭痛
偏頭痛
耳鳴り
耳の閉塞感
首や肩の凝りや張り
冷え
しびれ
動悸
下痢
便秘
食欲不振
過食
拒食
胃痛
吐き気
息切れ
息苦しい

自律神経については下の記事でも詳しく説明しています。
そちらを参照ください。

WHOも公式に認定

疾病や死因の国際的な統計をとる際の統一的な基準として世界保健機関(WHO)が作成した分類に「国際疾病分類(IDC)」があります。

WHO加盟国は、死亡率や罹患率の統計に最新のICDを使用することになっており現在、世界の100か国以上が使用しています。
日本でも統計法に基づく統計基準として統計調査に使用するほか、医学的分類として医療機関における診療記録の管理等において広く活用されています。

WHOは、2018年6月に疾病の国際基準となっている国際疾病分類の第11回改訂版(IDC-11)を30年ぶりに公表しました。

このなかに漢方・鍼灸など日本、韓国、中国が中心の伝統医学の章(第26章 伝統医学の病態‐モジュールⅠ)を初めて設けました。

IDC-11は、2019年5月に世界保健機関(WHO)の総会で正式に承認され、2022年に発行されました。

このようにWHOでは、伝統医学(漢方・鍼灸)を公式に認定しています。

患者さんからの質問

10年以上、鍼灸師として臨床にたちますが、よく受けるご質問を「患者さんからの質問」として紹介します。

独自の視点で患者さんの疑問や質問にお答えします。
参考にしていただければ幸いです。

鍼灸治療の鍼は痛いですか?

たいへん多い質問です。
痛みは人それぞれ感じ方が違いますので、主観になります。
痛い鍼は苦手だという患者さんもいれば、痛くないと効いた気がしないという患者さんもいます。

鍼は「痛い」「痛くない」と単純に答えられない質問でもありますが、基本的に鍼灸治療で使う鍼は髪の毛ほどの太さなので、それほど痛くはありません。

しかし、「はり」という言葉の響きで注射針や縫い針を思い浮かべますと痛いイメージを持ってしまいます。
ただ、痛い鍼を刺す鍼灸師も大勢います。

鍼の痛さはいろいろな要因に左右され、また鍼灸師の考え方により痛みに違いが生まれるように思います。
大げさにいえば鍼灸師の哲学が鍼の痛さに影響します。
痛みを左右するいくつかの要因について考えてみたいと思います。

鍼の太さについて

鍼灸治療で使う鍼はたいへん細いですが、その中でも太い部類の鍼は絶対的に痛くなります。

使われる鍼の太さは、番号で規格されています。
0番という鍼が0.14㎜で細い鍼になります。
5番で0.24㎜、10番で0.34㎜となります。
中国鍼はさらに太いものになります。

私は普段鍼灸治療で、主に0番(0.14㎜)と2番(0.18mm)を使い、場合によって0番よりさらに細い00番(0.12mm)を使っています。

鍼先の形状について

日本の鍼は、よく作られていて痛みを和らげる鍼が多くあります。
ただし、原産国は海外のものが多く存在します。

また鍼先の形状(角度)によって、痛みが変わります。
鍼灸師の刺し方など特性に合わせた形状の鍼を選ぶことで、痛くない鍼を刺すこともできます。

鍼の材質について

現在、鍼灸治療で使われているほとんどの鍼の材質は、ステンレスになっています。
また、痛みを緩和する目的でシリコンがコーティングされている鍼もあります。

昔から金や銀を材質とする鍼があります。
金鍼や銀鍼といいますが、純度は9割位になっています。
金や銀の鍼は、痛みの質が違うような感覚を受けます。
また金や銀の鍼は、やわらかいので刺す技術が必要となります。
金鍼や銀鍼は、滅菌の問題やコストがかかるので、使う先生は少なくなっています。
ちなみに、5年前くらいで金鍼は1本500円くらいでしたが、昨今の金価格の上昇により値段が上がっていることが予想されます。

ステンレスの鍼は、金鍼と比較すると痛みが固めというか鋭いような気もします。
が、技術によりステンレス鍼でも痛みを与えない指し方を上手な鍼灸師はしていると思います。

鍼を刺す技術について

一般的に細い鍼は、刺す技術が必要となります。
細い鍼をただ刺すだけなら簡単なのですが、治療効果として効かせるとなると難しくなります。

太い鍼は、刺激量が多いのでツボから少しずれて鍼を刺しても効かせることができます。
しかし、0番のように細い鍼はツボからずれてしまうと効かせることができなくなります。
細い鍼を使いこなすためには、正確にツボを探して、正確に刺し、深さなどを調節しながら効かせる技術が必要になります。

また、鍼の刺し方にもいろいろな技術があり影響します。
鍼を刺すときは右手と左手の操作と道具が必要になりますが、個々の鍼灸師の技術には差があり、痛みに違いが生まれます。
私の巣鴨の師匠は手先がやわらかくとても器用なので痛みを与えることなく3本同時に鍼を刺すことができたり、左右両方の手を使い分けて痛みを与えず鍼を刺すことができます。

刺す場所について

身体の刺す場所により、痛みに違いがあります。
手のひらや顔は痛みを感じる神経が多いため痛みを感じやすく、背中は比較的痛みを感じにくくなっています。

このように鍼を刺す場所にも気を使うことが必要だと思います。
私は顔に鍼をするときは、内出血をしやすいこともあり、0番よりさらに細い0.12㎜の鍼を使います。

鍼の深さについて

鍼を指す深さによって痛みは変わります。
一般的に皮膚の表面から浅く刺す鍼は痛くありません。

逆に深く刺す鍼は痛くなります。

ただ、専門的になりますが浅く刺す鍼は切皮のコントロールが難しく、切皮痛を伴うことがありますので、技術が必要になります。

リズムについて

人はリズムやテンポに順応しやすい動物です。
言葉を変えれば、リズムやテンポに慣れやすく騙されやすい動物でもあります。

痛い鍼でもリズムよく、一定の間(ま)で刺されると痛みを忘れてしまうことがあります。

鍼灸治療を受けていて鍼が痛かったり、痛くなかったりすると身構えてしまい、痛いという印象だけが残ってしまいます。

私の前橋の師匠は、痛い鍼を刺すのですが、リズムと間が一定のため患者さんは常に安心して治療を受けていました。
私はいつも師匠の鍼灸治療を受けながら寝ていました。

鍼とツボについて

ツボにうまく鍼が刺さると痛みを感じないことがあります。

さらに症状が悪いときにツボにうまく鍼が刺さると、痛いどころか気持ちよさを感じることがあります。

逆にツボを外すと痛いことがあります。

ツボを上手くとらえる鍼灸師の鍼は痛くないように思います。

以上、述べてきたように鍼の痛みは、様々な要因を鍼灸師がどう考え、実践するかにより違いがでます。

最後に、患者さんの症状を治すことが前提となりますが、傾向として痛い鍼が嫌いな鍼灸師は、痛くない鍼を刺す先生が多いような気がします。
一方、痛い鍼でも治ればよいと考える鍼灸師は、痛い鍼を刺す先生が多いような印象を受けます。
正解はありませんので、最終的には鍼の痛みを患者さんがどう受けとめてくれるかによると思います。

なお、私は痛い鍼が苦手ですので学生時代から細い鍼を使っています。

お灸は熱いですか?

はじめに昨今、お灸を使う鍼灸院が少なくなっています。
理由はいろいろありますが、主に手間がかかり技術が必要だということだと思います。

当院も含め多くの鍼灸院では、痕に残らないほんのり温かい気持ちのよいお灸を行っています。
熱さを感じたらすぐお灸を取りますので、また火傷もしません。
以上から熱くないとお答えします。

ただ、お灸というと悪いことをしたときの「灸を据える」というようにお仕置きの熱く、痕に残るお灸をイメージする方が非常に多いように思われます。
しかし現在、このような熱く、痕に残るお灸をしている鍼灸院はほとんどないと思います。

お灸は江戸から昭和初期頃まで家庭でも盛んに行われていました。
現在は国民皆保険制度が整っていますので、誰でも安価に医療を受けられるようになりました。
しかし、以前は医療制度が整っていませんでしたので、病気にかかれないという事情、背景がありました。
裏を返せば、お灸をすると病気になりにくい身体をつくれるということになります。
先人たちの知恵だと思います。

ただし火を使いますので、我慢はしないでください。

治療中眠くなる・トイレに行きたくなる・お腹がグルグルなる

治療中眠くなる

治療中に眠くなることは、身体にとってよいことです。
自律神経における副交感神経が優位になっている状態ですので、リラックスし身体が休息、修復をしている状態です。

トイレに行きたくなる

治療中や治療後にトイレに行きたくなることは、身体にとってよいことです。
自律神経における副交感神経が働いている状態ですので、鍼灸治療の鍼や灸が効いています。

遠慮なくお声かけください。

お腹がグルグルなる

治療中にお腹がグルグルなることは、身体にとってよいことです。
内臓は自律神経における副交感神経に支配され働いています(ただし交感神経や交感神経と副交感神経の両方に支配されている内臓もあります)。

鍼灸治療で鍼や灸が効いて副交感神経が刺激され、胃や腸が動いてグルグルなっている状態です。
お腹がグルグルなると患者さんは恥ずかしいと思いますが、気にする鍼灸師はいません

なお、鍼灸治療は内臓疾患によく効きます。

以上、治療中に眠くなったり、トイレに行きたくなったり、お腹がグルグルなったりすることは鍼や灸の治療効果がでている証拠なので全く気にしなくて結構です。
身体の状態がよくなっているのだと思ってください。
おなら、げっぷ、あくびも同様です。

鍼灸師は、普段の生活の中での食事・睡眠・排便(大便・小便)の状態を重要視します。
人間の生理状態の基本であるこの3つが整ってきますと、予後がよくなります。
つまり、治りや改善が見えてきます。
逆に整わないと時間がかかることが多いです。

治療後によくなった感じがしない

治療直後に症状の改善がみられないことはあります。
このような場合は、少し時間をおいて変化がでてくることが多いです。

また、治療を受けた日はしっかり睡眠をとってください。
起きた後すっきりし、症状がよくなっていると思います。

治療後、時間をおいて改善されたという頭痛の症例をあげます。
私は必ず治療の前に脈を診ます。
専門的には脈診といい、東洋医学的な見地で脈を診ていますが、脈診をしない鍼灸師もいます。

治療後に検脈といいますが再度脈を診て、改善の方向へ脈の変化がでているかを確認します。
脈に変化があれば、その場で症状の改善がみられなくても、時間差で症状の改善がでることがあります。
その日は早めに休んでいただいて起きたらすっきりしたということはよくあります。

ただし、治療後に脈の変化がないときは、時間がかかることが多いです。

治療は旅行の前か後か

家族との旅行を予定しているが、鍼灸治療を「旅行の前」に受けるか「旅行の後」に受けるかという質問です。
私は「旅行の前」に受けるべきだと思います。
理由は、患者さんにとって鍼灸治療を受けることが第1の目的ではなく、旅行を楽しむことが目的だからです。
ベストの状態で旅行を満喫してもらいたいと思います。

また、昔から東洋医学や鍼灸は、予防医学といわれています。
病気になってから対応するのではなく、病気になる前に対応していくという考えがあります。
旅行は疲労もたまるので帰宅後は体調を崩しやすくもなります。
そうならないように前もって体調を整えておくことが大切だと思います。

イベントがあるときの治療を受けるタイミングは、旅行だけでなく様々な状況に共通します。
ゴルフなどのスポーツをするとき、人前での講演やスピーチを控えているとき、面接やデートで失敗ができないとき等など。
イベントの前に鍼灸治療を受けると質のよい睡眠がとれます。
また胃腸を含めて体調が整い、顔色もよくなり、緊張せずに力を発揮できると思います。

血管の上に鍼やお灸をしても大丈夫ですか?

自宅でお灸をしてもらっている患者さんから受けた質問です。
大血管以外は、基本的には問題ありませんのでそのままお灸をしてもらって結構です。
気になるようでしたら少しずらして血管を避けてお灸をしてください。

ツボには、動脈拍動部といって血管のドクドク拍動している箇所にとるものがあります。
なぜかというとよく効くからです。
また、血管は弾力性があり鍼灸で使う細い鍼は血管に刺さり難くなります。
鍼が血管にあたると、血管が動いてよけてくれるイメージです。

しかし、毛細血管などの細い血管に鍼が刺さると、内出血することがあります。
これは鍼を抜くときなどの鍼灸師側の技術的な問題が影響します。

お酒を飲んだ後に治療を受けられますか?

私は治療を原則お断りしています。
お酒を飲んで酔った状態で鍼灸治療を受けると、酔いが強くまわってしまうような症状になります。
駆け出しの頃、お酒を飲んだ親戚に治療をして失敗した経験があります。
お酒に強い人でしたが、動けなくなってしまい慌てた記憶があります。
専門的には、「ドーゼオーバー」の状態といいます。

ところで、鍼灸治療は二日酔いによく効きます。
頭痛やめまいがよくなり、アルコールの抜けもよくなります。
アルコール過多による急性の肝炎や膵炎などの症状にもよく効きます。
昔、友人が飲み過ぎて急性膵炎の症状になったときに緊急で治療をしたことがありました。

最後に「鍼灸治療の後にお酒は飲めますか?」という質問に答えたいと思います。
症状を治すことが目的なので、お酒は飲まない方が賢明だと思います。
ただお酒を飲むことだけを考えますと、私が行うような全身治療では、身体の状態を診ながら治療を行っていきますので、身体に余計な刺激を残しません。
治療を受けた後、お酒が美味しく飲めると思います。
肝臓、膵臓、腎臓などの内臓機能が高まりますので、たいへんお酒が美味しく感じると思います。

片側のお灸が熱い

自宅でお灸をしていただいている患者さんからの質問です。
両足のツボにお灸をしていると、左足のお灸だけ熱く感じるというものです。

原因は幾つかありますが、まず2つ考えられます。

①お灸をするツボの位置がずれている

②左右の足の温度が違う

①ですが、お灸をするツボの場所がずれてしまっていると熱く感じることがあります。
自宅でしてもらうお灸へのツボ周辺は冷えていることが多いので、ツボがずれてしまうと冷えの箇所を外してしまいます。
すると熱く感じてしまうことがあります。
時間が経つと、ツボのしるしが消えてしまってツボの位置がずれてしまうことがあります。

また、ツボは体調や症状により動きますので、どうしてもずれてしまうことがあります。
ずれてしまっている時は、ツボのしるしを付け直します。
灸点を降ろし直します。

②ですが、足の温度には左右差があります。
右足が冷えていれば左右同時に始めたお灸でも左足のツボのお灸を熱く感じることがあります。
血行の問題とも言えますが、症状により足の温度は左右差があります。

また、痺れや痛みなどの症状が手にある場合などは、手の温度に左右差が出ることがあります。

普段の鍼灸治療でも左右のバランスを診ていき、整えていきます。
左右温度差があったものが、同じくらいの熱さに感じてくると症状が改善の方向に向かいます。

私は患者さんに自宅でのお灸を勧めています。
3分間くらいの手間ですが、毎日お灸をすると体調が良くなります。

症状が急に悪くなる日がある

継続的な鍼灸治療をしている患者さんから受ける質問です。
「症状が良くなってきたが、急に症状が悪くなる日がある」というものです。

生活習慣、ストレス、気候など原因は幾つか考えられます。
個々の患者さんとの対話で原因を検討していきます。

また、このような質問を受けると必ず患者さんに聞く大切なことが3つあります。
食事、睡眠、便通についてです。
人が生きていくうえで基本となる大切なものです。

食欲や食べ物に偏りは無いか?
寝る時間や睡眠の質はどうか?
便秘や下痢をしていないか?

などもっと具体的に深く症状との関係性を考えながら確認していきます。
とかく調子がよくなってくると、つい睡眠時間を削ってしまったり、偏った食べ物や飲み物を嗜好してしまいます。

治療開始当初に乱れていた食事、睡眠、便通が整ってきますと、急に症状が悪くなる日があったとしても症状が当初の状態へ戻ることはほぼありません。
症状は改善の方向に向かっています。
これは腰痛などの疼痛疾患だけでなく、更年期障害や自律神経失調症など様々な症状に当てはまります。

筋肉痛に鍼灸治療は効きますか?

結論から言いますと、鍼灸治療は筋肉痛に効きます。
大変有効だと思います。
その効果は、痛みを取り去るだけでなく、回復を早めます。
様々なプロスポーツやオリンピック競技などのアマチュアスポーツの現場にも鍼灸治療は生かされています。

先ず始めに、筋肉痛とは「筋肉に生じる痛み」を言いますが、メカニズムなど未だに解っていないことがたくさんあります。
身体の中は複雑で様々な作用や影響が関わり合いますが、今回は教科書をめくりながら、私の解釈を加えつつ筋肉の痛みと血液の流れにポイントをおいて説明します。

筋肉の痛みについては、鍼を刺すと自身の身体から痛みを抑える物質が分泌されることが分かっています。
また、筋血管の血流が増えると痛みの原因となった発痛物質が排除されて痛みが解消することも分かっています。

血液の流れについては、筋血管の血流が減少すると、痛みが発生します。
血流が正常になったり、回復していくと筋肉の痛みは解消されていきます。

血管は、自律神経の交感神経の命令を受け働いていますが、交感神経が強く働くと血管を収縮させてしまいます。
筋血管が長い時間収縮し続けると筋血流が減少してしまうので結果、痛みへとつながります。
鍼や灸をすると自律神経の副交感神経へも影響を与えますので、交感神経の働きが弱まっていきます。
すると筋血管が拡張していき筋血流が改善し、筋肉の痛みが解消していきます。
なお、一部の血管は副交感神経に支配されているものもあります。

ところで鍼灸治療には、身体を回復させる幾つかの作用がありますが、その中に「誘導作用」というものがあります。
教科書によると、患部に直接鍼や灸をするか、または遠隔部に鍼や灸をして、その部の血管に影響を及ぼし、充血を起こし、患部の血流を調節するものとあります。
さらに誘導作用は2つに分かれます。

①患部誘導法:局所の血行障害に対し、直接その患部に施術して、血流を他の健康部から誘導する方法

②健部誘導法:局所の充血または炎症などの際に、その部位より少々隔たった部に施術し、血液をそちらに誘導し、患部の血流を調節する方法

ざっくり要約しますと、身体を回復させるには、悪い箇所だけに鍼や灸をすることもありますし、少し離れている箇所に鍼や灸をすることもあります。

患部を選ぶか遠隔部を選ぶかという治療箇所の見極めは、鍼灸師の特性によるかと思います。
鍼灸師の持つ理論や技術、経験、好みなどによるかと思います。

私の場合は、筋肉痛が急性期か慢性期であるかを確認し、熱を持っているか冷えを持っているかを診ます。
脈を診たうえで患部や遠隔部に対して、熱と冷えに応じて鍼や灸を使い分け治療します。
患部だけ治療することもあれば、遠隔部だけの治療もあり、また両方治療する場合もあります。

確かに、筋肉痛はもとより身体の仕組みや働きについては、東洋医学のみならず現代医学を以てしても解明されていないことが多々あります。
しかし東洋医学は、数千年に及ぶ先人たちの経験の積み重ねを経て、体系化されてきました。
我々鍼灸師はそのなかで、効果があるものを見極めて鍼灸治療をしています。

お灸に向かない人

私は、患者さんへ自宅でのお灸を勧めています。
適切なツボへのお灸は、症状の改善だけでなく、健康の維持にもつながるからです。
お灸は免疫力を高めます。
私自身、毎日お灸を続けています。

しかし、そのような身体によいお灸でも向かない人がいます。
それは「糖尿病」の人です。

糖尿病にかかると小さな火傷や傷が治りにくくなり、その箇所が原因となり大きなケガを負ってしまうことがあります。

また糖尿病の人は、神経障害になることがあり足などの感覚が鈍くなってしまうことがあります。
熱さや痛みに気がつき難くなってしまいます。
お灸をして温かく気持ちが良いと感じていても、気がつかないうちに火傷を負ってしまうことがあります。

私は問診のなかで、現病歴として糖尿病であるかの確認をするようにしています。

かなり重要なポイントであると思うのですが、学校で学んだ教科書には記載されていませんでした。
鍼灸師として駆け出しの頃、仲間達との勉強会で鍼灸師である医師から「鍼灸師は、糖尿病の人を治療する時は注意すべき」と説明を受けそれ以降、留意しています。

カイロや湯たんぽからの低温やけども同様なので、糖尿病の方は注意してください。

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