気がつきにくい自律神経の症状

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気がつきにくい自律神経の症状

自律神経の不調や異常は、気がつきにくい特徴があります。
気がついたときには自律神経失調症、パニック障害、睡眠障害、内臓疾患など様々な症状や病気が現れることもあります。

なぜ、このような不調や異常に早く気がつくことができないのでしょうか。

理由として自律神経の構造は、意識にのぼることなく自動的に調節されているということがあります。
自律神経は潜在意識で働く神経で、言い換えれば無意識の神経となります。

無意識の自律神経

意識と潜在意識の関係は、よく氷山に例えられます。
海面上に出ている部分が意識で、海面下にあって見えない巨大な部分が自律神経や感情などの潜在意識です。

潜在意識(自律神経)の大きな力は、我々を知らないうちに支配し生命を維持させています。

抽象的になりますが通常、意識が扉を閉めているといわれ、潜在意識に働きかけることはできません。
意識と潜在意識はお互い自由に越えていくことができないのです。

特に意識側から潜在意識側へ行くことは困難だといわれています。
これは意識的に潜在意識(自律神経)をコントロールできてしまうと、生命の維持に重大な影響を及ぼしてしまうためです。
例えば、心臓は自律神経に支配されドキドキと動いていますが、意識的に心臓を止めてしまうと生命を維持することができなくなり死んでしまいます。

自律神経とは無意識の神経であり、海面下の氷山の部分のように隠れています。
このために不調や異常に気がつきにくい特徴があります。

しかし、無意識であるために不調や異常に気がつきにくい自律神経ですが、働きかけによって整える方法があります。

鍼灸治療

1つは鍼灸治療です。
鍼や灸を使ってツボや経絡に働きかけると、潜在意識である自律神経が整っていきます。

また、血管は自律神経がコントロールしていますので、鍼や灸をすることにより自律神経が働き、血流がよくなり身体が温まります。

鍼灸治療を受けているとなんだか眠くなってきてしまうことがありますが、これは自律神経の副交感神経が働いているためです。
睡眠時にはリラックスしているときに働く副交感神経が支配します。

ただし、鍼灸師の立場からいいますと、「ただ鍼をさす、ただ灸をすえる」だけでは高い効果は期待できません。
身体には症状に応じてツボの反応が現れていますのでこのツボを上手くとらえ、ツボの反応に応じて鍼や灸をする必要があります。
専門的には陰陽(いんよう)や虚実(きょじつ)といいますが、陰陽や虚実を見極めつつ、これに応じて鍼や灸で治療をしていきます。

呼吸法

2つめは呼吸法です。
「腹式呼吸法」になります。
一日数回、腹式呼吸を行うことにより自律神経が整っていきます。

内臓は無意識に働き、意識的に働かせることはできませんが、例外があります。
それは肺です。
口から息を吸ったり息を吐いたりすることで肺を動かすことができます。

普段肺は、無意識に呼吸していますが、意識的にコントロールすることもできます。
意識して呼吸を止めたり、大きく息を吸ったり自由にすることができます。

つまり意識でも無意識(潜在意識)でも両方でコントロールできるのです。
生理的には随意神経系と不随意神経系からの二重支配を受けています。

なお、深呼吸と腹式呼吸は異なります。
腹式呼吸法を間違ったやり方でしたり、やり過ぎると酸欠など何らかのトラブルが起きる可能性がありますので注意が必要です。

ちなみに私は鍼灸治療の際、患者さんの呼吸を注意深く観察しています。
浅い胸式呼吸から深い腹式呼吸へと変わっていけば、副交感神経の働きを確認できますので治療効果を期待できます。

生活習慣の改善

3つめは生活習慣のちょっとした改善です。
自律神経は、私たちが起きているときも寝ているときも常に働き続けています。
無意識のなかで交感神経と副交感神経が働いています。

そして、自律神経は一日のなかで、リズムをもちます。
交感神経と副交感神経が一日のなかで、周期をもちます。
就寝時は副交感神経が優位になっています。

起床と共に交感神経が優位になってきます。
交感神経が身体を支配すると、身体は活動的な状態になってきます。

一日の始まりとなる起床時と、一日の終わりとなる就寝時に行うことにより自律神経によい影響を与える方法をいくつか紹介します。

起床時に行ってみて下さい。

・朝、日光にあたる
・朝食をとる

就寝時に行ってみて下さい。

・寝る前にスマホやパソコンの画面をみない
・緩めの靴下を履いて寝る

これらの行動を「あたりまえ」と思われるもしれませんが、私たちの身体はあたりまえの習慣や行動を必要としています。
大昔、狩りをしていた頃の人間は規則正しい生活をしていたはずですから。

緩めの靴下について説明します。
靴下はもこもこした靴下で十分です。
きつめの靴下ですと緊張してしまいますので、緩めがポイントです。

人の身体は眠る用意ができると、手足の先に血液を多く送って手足から熱を逃がします。
そうすることで身体の内部の温度が下がり、続いて脳の温度が下がっていきます。
温度を下げることにより、脳や身体の疲労を回復させます。

手足など身体の末端を温めると血液の循環を促し、身体の放熱が進むので、体温が下がりやすくなります。
このとき、副交感神経がどんどん優位なっていきますので、結果よい睡眠につながります。
東洋医学でいう頭は冷やし、足を温める「頭寒足熱」の考え方にもなります。

自律訓練法

4つめは自律訓練法です。
自律訓練法は、自己暗示によって自律神経を整える方法です。
暗示というとなんだか身構えてしまうかもしれませんが、他者からかけられる暗示ではなく自分で自らにかける暗示なので、慣れると自宅で一人で行うことができます。

頭のなかで梅干しを口のなかに入れているイメージをすると、唾液がでてくると思います。
建物や橋などの高いところにいるときに、安全な状態にもかかわらず落ちるイメージをすると足がすくんでしまうことがあります。
人によっては嫌なことを考えるとお腹が痛くなることもあります。
これらは自己暗示といえます。

また自律訓練法は、厚生労働省でも情報を提供している訓練法です。

ざっくりいうと、自律訓練法は安静公式、第1~6公式、特殊練習法、覚醒を行います。
3~5分くらいで終わります。
一人で行うときは、頭でイメージします。
はじめは誰かとやるのがいいかと思います。

少し専門的になります。
調子のいいことばかり書きましたが、言葉から自律神経に訴えかけることは少し難しい作業になります。
自律神経の中枢は、脳の大脳辺縁系という生理的な機能を処理する原始的な部分にあります。
一方、言葉は脳の大脳新皮質という新しい部分で処理されます。
自律神経と言葉(言語)は脳のなかで処理する場所が根本的に異なります。
この相反する脳の働きが意識と無意識の扉をつくり、自律訓練法の困難さを生んでしまいます。

ただコツがありますので、やり方次第でこの扉を開くことはできますし効果も期待できます。
私は特殊練習法の公式に「手の指先が温かくなる」とし、2℃程温度が上がる実験をしたことがあります。
感覚的なことだけでなく、数字で確認できましたのでやはり効果はあると思います。

病気と健康の間のグレーな症状

現代は過度の緊張やストレスなどにより自律神経のバランスが乱れ、予期していない病気になることがあります。
ときには「病院で検査をしても異常はないのに体調がよくない」ということもあるかと思います。

このような症状を東洋医学では「未病(みびょう)」といいます。
病気というほどではないけれど、病気に向かいつつある状態のことです。
白でも黒でもないグレーの状態とでもいえるでしょう。

一般的に病院では機械や血液などでの検査に異常がなければ病気と診断されませんが、検査に異常がなくても体調が優れないことは往々にしてあります。

人は生きていれば、突然不調になることもありますし、年を重ねていけば老化からくる不調は避けられません。
ただ、健康な状態でいる方が生活は充実しますし、なにより人生を楽しめると思います。

「はり灸 まつもと」では、病いや自律神経の乱れからおこる不定愁訴などを鍼や灸で治療し、その予防にもよいものを紹介していきます。
症状の改善だけでなく未病も含めて健康維持のお役に立てるようつとめています。

ストレスと自律神経

自律神経を乱す最大の原因は、ストレスといわれています。
ストレスは体質、性格、考え方、病気、ケガなどの内的要因と自然環境、生活環境(職場や家庭など)、人間関係、生活習慣などの外的要因があります。

この2つの要因が複雑に絡み合い、その人が受け止める許容範囲を超えた時に、自律神経のバランスが乱れて体調不良を起こします。
症状が進むと不定愁訴や自律神経失調症といった症状へもつながっていきます。

「ストレスに強い」「ストレスに弱い」というのは、心と身体へのストレス度には個人差がありますので難しい問題です。
ストレスは心身にとって、そして生きていくうえで必要なストレスもあり、人を成長させるきっかけになることもあります。
ストレスが無さすぎるために体調が悪くなることさえあります。

大切なことは自分がどのようなストレスを感じ、またどのような時にストレスを感じるのかを自覚し不調を起さないようにストレスと上手に付き合っていくことだと思います。

普段から強いストレスを感じたらため込まないようにして下さい。
強いストレスを感じたら、我慢せずストレスをかわしたり、時には身を引くことも必要だと思います。

具体的なストレスをため込まない方法、考え方として認知行動療法なども参考になります。
例をあげるとすれば、どうしても「やらなければならないこと」があるとします。
まず、何も考えずに机に向かってみるという方法があります。
頭で考えるより先に行動に移してみると、意外とことが進みます。

また以前、運営していた鍼灸院で患者さんへお勧めしていた意識的、意図的なストレス解消法に「コーピング」というものがあります。
いずれ、ブログで紹介したいと思います。

過度のストレスにより乱れてしまった自律神経はやがて不定愁訴や自律神経失調症への恐れがありますので、鍼灸治療などで早めに調整することをお勧めします。

自律神経のバランスを乱すさまざまなストレスを紹介します。

物理的なストレス
気温の変化(暑さ・寒さ)
気圧の変化(低気圧・高気圧)
天候(晴れ・曇り・雨)

環境的なストレス
騒音
振動
空気汚染
花粉
ほこり

社会的なストレス
成績
いじめ
業績
残業
夜勤
失業
転職
退職
結婚
離婚
同居
別居
出産
育児
家庭内暴力

肉体的なストレス
病気
ケガ
妊娠
出産
持病
疲労

精神的なストレス
失敗
挫折
失恋
不満
不安
嫉妬
喪失感
恐怖

人間関係のストレス
上司
同僚
友人
恋人
家族
親戚
隣人

よくある自律神経の症状

鍼灸院へ不定愁訴や自律神経失調症の治療に来院する患者さんで最も訴える症状は、「倦怠感」「疲れやすい」という症状です。
いくつかの症状を訴えるなかに、ほぼ「倦怠感」「疲れやすい」という症状が含まれます。
身体に力が入らなくなり「だるい」「疲れる」という状態になります。
何をやっても疲れやすく「何もしたくない」「何もできない」というように無気力となることがあります。

特に朝起きるのが辛い、午前中が辛いという患者さんもいます。
起床とともに活発になっていく交感神経の働きが乱れているのが原因です。
病院では起立性調節障害と診断されることもあります。
これは、寝ている状態から起き上がるときに循環器系の調節がうまく働かず起こる自律神経失調症です。
循環器系を含め内臓の働きへ命令をしているのが自律神経ですが、この自律神経が乱れてしまうことにより起こる症状です。

普段、倦怠感や疲労は寝たり、ゆっくり身体を休めるなど休息をとったり、気分転換をしたりすると回復します。
しかし、いつまでも倦怠感が持続したり、疲れがとれないのが不定愁訴や自律神経失調症の特徴です。

原因としては、慢性的な疲労や睡眠不足、夜更かしなどの不規則な生活があると思います。
人間関係や仕事のプレッシャー、精神的なストレスもあります。
性ホルモン分泌低下から起こる更年期障害も該当します。

鍼灸院に訪れるこのような症状の患者さんの多くは、特徴として足が冷えていることがよくあります。
私の鍼灸院では、鍼灸治療と並行して、足の冷え対策をしてもらいます。
また、その人の症状に合わせたツボにお灸を毎日してもらっています。
これは毎日続けられるような自宅で手軽にできるお灸です。

一方、足が冷えていない患者さんについては、鍼灸治療と並行して自宅でお灸なども含めた養生(生活習慣の改善など)をしてもらいます。

次第に自律神経が整っていきますので、期間については個人差がありますが、倦怠感や疲れやすいという症状、またその他の症状が改善していきます。

では実際、私が自律神経失調症と更年期障害についてどのような鍼灸治療をしているのかを一部紹介します。
下の記事、「鍼灸治療例(自律神経の乱れ)」を参照してみてください。
症状、年齢、治療効果、治療回数、経過(予後)など参考になるかと思います。

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