鍼灸治療においては、ツボに鍼や灸をすることが日常です。
鍼と灸どっちが効くのか?
このようなことをたまに、患者さんから聞かれることがあります。
鍼と灸の使い分けは必要なのか?
また、勉強会の講師をしていたときに受講生から質問されたことがあります。
私も駆け出しのころ、疑問におもっていた時期がありました。
ただこの質問や疑問については、明確な答えが準備されています。
鍼灸師の教科書となる『黄帝内経 霊枢』という東洋医学の歴史書に記載されています。
経脈篇というところに、繰り返し記述されています。
盛則寫之.虚則補之.熱則疾之.寒則留之.陷下則灸之.不盛不虚.以經取之.
下線部分のたったこれだけの個所ですが、鍼灸治療の基本となります。
虚実に応じた補法や瀉法など前後の文章は省略します。
冷えていれば鍼をとどめる。
へこんでいれば灸をする。
ツボの状態に応じて鍼と灸を使い分けます。
また、治療の効果を高めることができます。
ツボを触ってみて冷たかったら鍼をして、鍼を少し刺したままにしておきます。
専門的には置鍼(ちしん)といいます。
15~20分くらいを目安に鍼をしたままにします。
また、ツボを触ってみて、力なくへこんでいるようなら灸をします。
専門的には虚(きょ)の状態といいますが、この状態により灸を使い分けます。
私だったら透熱灸(とうねつきゅう)をすることが多いです。
米粒または、米粒の半分くらいの大きさの艾(もぐさ)でする灸です。
緩和といって指先で、燃えている艾の熱のコントロールをします。
以前、師匠を含めて仲間たちと日曜日に集まって交換治療会をしていたときがあります。
そこで私は「お灸しばり」をして、あえて鍼だけで治療をしていました。
へこんでいるツボには灸をするべきだと『黄帝内経 霊枢』には記載があるのですが、無視して鍼の治療をしていました。
へこみに鍼をしたときに、普段している灸との治療効果の差を確認したりしていました。
ツボを取れることが前提となりますが、実感として灸をすべきツボに対して、灸をすれば治療効果は上がるとおもいます。
同様に鍼も同じことがいえます。
私に鍼灸を教えてくれた師匠は、みなさん鍼灸治療で灸を使っていました。
鍼と灸の使い分けは鍼灸治療の基本だとおもうのですが昨今、灸をしない鍼灸師がふえているのが少し残念です。